年を重ねた親を想って言っているのに、想いが届かない。
必要のないものを買い続けているように見える。心配して声をかけると、なぜか怒られる。正しいことを言っているはずなのに、関係だけがぎくしゃくしていく・・・。
先日のグループコンサルで、ある会員の方からこんな相談がありました。80代のお母様が骨折で入院したことをきっかけに、それまで見えていなかったことが一気に表に出てきた。実家のこと、お金のこと、周囲から次々に飛んでくる要望。「自分の感情が乱れてまで、どこまでやればいいのか分からない」という状態でした。
この方が変えたのは、お母様ではなく、ご自身の声のかけ方でした。今回は、親子関係にかぎらず、部下にもパートナーにも起こりがちな、「相手を想っているのにうまくいかない、身近な人間関係」の課題を、価値観で紐解きます。
この記事でわかること
✅ 相手の価値観は、言葉ではなく行動のどこに表れるか
✅ 「ダメなものを取り上げる」以外の選択肢のつくり方
✅ 身内だからこそ優しくできない理由と、その抜けだし方
価値観とは、言葉ではなく行動に出るもの
価値観とは、誰にも言われなくても時間、お金、エネルギーを使ってしまう行動のことで、本人の言葉より行動のほうに正確に表れます。
ここが、相手を理解しようとするときにいちばん取り違えやすいところです。私たちはつい「本人が何と言っているか」を聞いてしまいます。けれど人は、自分が何を大切にしているかを正確には説明できません。
「一人でいるのが好き」と言いながら、人に会う場には必ず出ていくんです。──言っていることより、やっていることを見てみましょう。
会員の方の相談でも、お母様は「もう仕事は面倒だ」と口では言っていました。それでも人と会う場には出ていくことをやめなかったそうです。そこから見えてきたのは、人に会い、人から見られることが、お母様にとって大きな意味を持っているということでした。
価値観そのものの考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。価値観とは何か|行動に表れる"本当の優先順位"の見つけ方
つながり直す3つの手順
お母様は、病院にいる最中、必要のないものを買い続けて、自分で買ったことを忘れているようなことが何回かあったそうです。判断ができなくなってきているのかも・・・という不安もあり、心配して「自分では買わないように」と伝えると、ものすごく憤慨されたそうです。正しいことを言っているはずなのに、関係だけがぎくしゃくしていく・・・・。そんな時に、相手を説得しようとするのをやめて、順番を変えてみてください。
1時間とお金を使っているものを観察する
何を買っているか。何の話をしているときに表情が変わるか。どこへ行くと機嫌がいいか。本人に聞くのではなく、行動を見ます。お母様の場合、美容品を買っていて、病室でもおしゃれをしたがる・・・お母様は、「美しくあること」を大切にしていました。
2取り上げるのではなく、一緒に選ぶ側に回る
手放させようとしていたものが、相手のよりどころだったということは珍しくありません。「もう買わないで」ではなく「次は一緒に選ぼうね」に変える。同じ制限をかけるにしても、奪う人ではなく、自分の目的をサポートしてくれる仲間になります。
3相手の価値観に沿った目標を、一緒に立てる
こちらの都合で立てた目標に、人は本気になりません。骨折での入院だったため、リハビリが待っている時期でした。「またおしゃれをして出かけられるようにしようね」と価値観にあった目標を立てることにしました。その人が本当に望んでいる姿を目標にします。こちらが望むことは、その先に自然についてきます。
手順2をもう少し詳しく
お金の使い方が気になるとき、多くの人はまず「使えないようにする」ことを考えます。けれど、支出そのものを止めても、その人がお金を使うことで埋めようとしていた心の欠落は残ります。そうすると、衝動性が出てしまう可能性があります。
お金を使って埋めていた心を、先に別の方法で満たす。
物ではなく、言葉と接し方で満たすことに一度チャレンジしてみてください。会員の方は、それまでお母様に「そんなものを買ってどうするの」と言い続けていました。それを「一緒に選んだあれ(美容品)、使ってみてどうだった?」に変えました。同じ話題を扱っているのに、立っている場所が変わります。
お金の使い方と価値観の関係は、こちらでも扱っています。「お金の管理ができない」のは意志の問題じゃない|価値観との関係と整え方
手順3をもう少し詳しく
目標を立てるとき、私たちは「こうなってほしい」を先に置きます。けれどそれは、こちらの価値観です。
相手の価値観に沿った目標に置き換えると、同じ行動が別の意味を持ちはじめます。「やらなければいけないこと」だったものが、「自分が望むもののためにやること」になる。人が続けられるのは、後者だけです。
年齢を重ねても活動的でいる方に共通するものについては、こちらで書いています。なぜ忙しいのに若々しい?エイジングしない人の秘密
身内だからこそできない葛藤、モードを変える
ここまで読んで「他人になら普通にできるのに」と思った方は、多いのではないでしょうか。相談された会員さんも、まったく同じことをおっしゃいました。
他人にはできるし、できている自信があるんです。ただ、身内となると・・・・。
これは性格の問題ではなく、モードの問題です。仕事で人に接するときの自分と、実家に帰ったときの自分は、同じ人でも別のモードで動いています。だから、意識してモードを選び直してみませんか?
それでも顔を合わせると、ついつい言葉が出てしまう、という場合には、まずテキスト(対面ではなく文字)から始めてみてください。相談された会員さんも、対面ではうまくいかなかったやりとりを、文章に変えたところから関係が動きはじめました。メッセージが難しければ、音声メッセージでも、はじめはスタンプ1つでも構いません。
大切なのは、一呼吸おいて、反射的な反応ではなく、モードを選び直す時間の余裕を自分に持つことです。
「正しさ」で相手を説得しない
よくある誤解が、「事実を正しく伝えれば分かってもらえる」というものです。
けれど、できていないことを近しい人から指摘されると、人は反発したくなったり、自信を失います。相談された会員さんも「強く言うほど関係が悪くなっていた」と振り返っていました。
そういうとき、どうしても伝えなければならないことがあるなら、医師や専門の相談員など、第三者から伝えてもらうのも一つの手段です。そのときも、伝え方を事前に相談しておくと、受け取り方が変わります。
希望を失わせるような対話やコミュニケーションではなく、相手が現状を正しく把握しながらも、前を向ける具体的なステップを準備するといいでしょう。
伝えにくいことを、相手に伝える時のヒントはこちらを参考にしてください。部下にネガティブフィードバックをしなければならない|罪悪感が責任感に変わる5つの問い
価値観に沿ったコミュニケーションは、誰にでも使える
LIFE MANDALAでお伝えしているセルフマスタリー(自分の価値観を軸に思考・感情・行動を整え、人生を主体的に設計し続ける力)は、まず自分に向けて使うものです。自分が何を大切にしているかが分かると、選択に迷わなくなります。
ただ、もっと応用できます。同じ価値観の構造を、目の前の相手の中に見ることができた時、私たちのコミュニケーションは驚くほど変化します。今回のグループコンサルは、そのケーススタディでした。
人生の曼荼羅®(LIFE MANDALAが開発した、価値観を中心に人生全体を8つの領域で可視化するフレームワーク)は、自分の人生を設計するための地図です。けれど8つの領域は、私たちが人間らしく生きるために必要な要素を並べたものでもあります。だからこの地図は、自分以外の誰かを理解しようとするときにも使えます。
寿命が延びるということは、親と過ごす時間も、自分が年を重ねる時間も長くなるということです。そこで起きることを「大変なこと」として構えるのか、それとも人の可能性を見る機会として受け取るのか。その差をつくるのが、価値観という視点です。
まとめ
相手を変えようとするのをやめて、順番を変えます。
①その人が時間・お金・エネルギーを使っているものを観察する。②取り上げるのではなく、一緒に選ぶ側に回る。③相手の価値観に沿った目標を一緒に立てる。そして、身内にだけできないと感じたら、モードを変えるか、テキストから始める。
あなたが、今日からできることは何ですか?
よくある質問
Q. 相手の価値観とは、具体的に何を見れば分かりますか?
相手の価値観は、時間・お金・エネルギーの使い道に表れます。何を買っているか、何の話で表情が変わるか、どこへ行くと機嫌がいいか。本人の言葉ではなく、行動を見てください。
Q. 相手の価値観を満たすのと、甘やかすのは違うのですか?
違います。甘やかすのは判断を相手に委ねること、価値観を満たすのは大切にしているものを一緒に扱うことです。「一緒に選ぼう」は、放任ではなく関与を増やす提案です。
Q. どうしても言わなければならないことは、どう伝えますか?
近しい人からの指摘ほど反発されやすいので、医師や相談員など第三者から客観性を持って伝えてもらう方法があります。事前に伝え方を相談しておくと、受け取られ方が変わります。
Q. 対面だとつい強い言い方になってしまいます。
まずテキストから始めてください。文章なら一度立ち止まれます。メッセージが難しければ音声メッセージでも、はじめはスタンプ1つでも構いません。
Q. これは親子関係だけの話ですか?
いいえ。部下・パートナー・取引先にも同じ考え方や手順が使えます。相手を説得しようとするのではなく、相手が大切にしているものから入る、という構造は変わりません。
価値観を、まず自分から整える
相手の価値観を見つけるには、自分の価値観が分かっていると精度が上がります。自分の判断基準がはっきりしているほど、「これは自分の好みで、あれは相手の大切なもの」と切り分けられるからです。
「価値観を整えたい・まず一歩踏み出したい」方へ。LIFE MANDALAの人生の曼荼羅®ワークシートを無料でダウンロードできます。
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